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#3.11#SNS#デマ#ファクトチェック#原発事故#放射線#風評

3.11以降発信されたツイートのファクトチェック No.3

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3.11直後にTwitter上で多くリツイートされたツイートについて、そのファクトチェックを行いました。
ウクライナ政府の発表した報告書の検証を続けます。
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3.11直後に拡散されたデマや風評について調べたい人

「報告書」の一部を取り上げた、ミスリードを誘うツイート

2013年10月29日に投稿されたツイート

「1997-2001 年には、チェルノブイリ原発30km ゾーンから避難した子どもと汚染地域にすむ子どもの両方で、健康な子どもの減少というはっきりした傾向が観察された。」

 

〈解説〉

2011年4月に出されたTwenty-five Years after Chornobyl Accident: Safety for the Future, National Report of Ukraine(ウクライナ政府(緊急事態省)報告書『チェルノブイリ事故から25年』)のp.155に示されている内容で、ウクライナ政府報告書botから発信されている。
内容はウクライナ政府報告書に書かれていることではあるが、報告書にも少し書かれていることであるが、放射線以外の好ましくない要因、即ち貧弱な栄養状態と報告書をきちっと読むと書かれてはいる。
しかしながら一連のウクライナ政府報告書botからのツイートを読むと放射能汚染の影響で、健康な子どもの減少が進んでいる、それは放射能汚染のせいだと誤読されてしまう。

更に詳しく

チェルノブイリ事故から25年:将来へ向けた安全性 2011年ウクライナ報告書

2016年1月刊 原著:ウクライナ緊急事態省、 監修:今中哲二、監訳:進藤眞人 を参照ください。

https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/210269/1/KURRI-EKR-5.pdf

 

p.155には以下のような記述があり、上記tweetはこれらのデータに基づいていると推察される。

 

また、p.156には

ここで言う放射線以外の好ましくない要因、とは何をさすか。

p.164には、「甲状腺疾患の有病率の増加には、事故の負の要因が複合的に寄与している。まず第一に、電離放射線の影響と幾つかの微量元素、特にヨウ素とセレンの不足がある。」という記述がある。

 

さらに別の国際誌に掲載された論文のなかには、一番の問題は「貧弱な栄養状態」が主因と考えられるとある。実際、2015年に発表された論文(Dietary supplementation with radionuclide free food improves children’s health following community exposure to 137 Cesium: a prospective study(放射性核種を含まない食品による栄養補給は、137セシウムの地域被ばく後の子どもの健康を改善する:前向き研究), DM McMahon他)という論文もでている。

実際、

1986年 チェルノブイリ事故

1990年 ベラルーシ独立宣言

1991年 ソ連崩壊・ウクライナ成立

1995年 食料品の制限が解除→内部被曝量が1988年レベルになる。

1995年に比べ、1996年の子どもの赤血球数やヘモグロビンレベルは1996年に一時的に低下している。これは、1986年〜ナロディチやウクライナ・ポリシア地方では毎日学校で汚染されていない食品を食べることが出来たが、1995年には資金が削減され、3食から2食に削減された影響が大きいのではないかと、述べられている。

 

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この記事を書いた人

宇野賀津子

宇野賀津子(京大理学博士)
公益財団法人 ルイ・パストゥール医学研究センター
インターフェロン・生体防御研究室  室長

専門:(公財)ルイ・パストゥール医学研究センター就職以来ヒトの免疫機能と疾患との関連の研究を一貫して進めている。対象は、癌患者のみならず糖尿病、リウマチ、キャッスルマン病、MPO-ANCA腎炎、最近ではCOVID-19と幅広く、インターフェロン・サイトカインの視点から一貫して研究をすすめている。
更にエイズ教育や外国人医療体制の確立、女性研究者支援活動にも係わる。
2011年秋からは日本学術振興会や日赤の要請で、福島県各地で低線量放射線の生体影響克服と食の重要性について講演活動をおこなった。その後、「放射線の影響とクライシスコミュニケーション」に関する先導的開発委員会 第二分科会主査、日本赤十字社「原子力災害における赤十字活動のガイドライン」作成のための研究会委員、生活関連の放射線に関する疑問への助言作成委員会副委員長等を務める。2016年より、3.11以降のtwitterによる情報発信の解析を進め、更にクライシス時のSNSによる科学的情報発信体制の研究を進める。

著書 
「低線量放射線を超えて:福島・日本再生への提案」小学館新書
「放射線必須データ32」創元社 分担執筆
「理系の女の生き方ガイド」ブルーバックス
「サイトカインハンティング:先頭を駆け抜けた日本人研究者達」日本インターフェロン・サイトカイン学会 京大出版会 編著