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##福島第一原発事故#シーベルト#内部被ばく#外部被ばく#放射線リスク

内部被ばくの危険説について 第1回:序文、公式見解と内部被ばくの危険説

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Understandable
内部被ばくリスクに関する疫学データ、ICRPによる通説と、危険性を大きく見積もった説(特にECRRの主張)を科学的・社会的観点から検討し、歴史的背景や裁判例を紹介しながら整理します。
広島・長崎での被爆という歴史から紐とき、原爆症認定訴訟を経て、福島原発事故後の内部被ばく危険説の流れと、その社会的な落としどころを考えるヒントが得られます。
Push
福島第一原発事故後の放射性物質による汚染の問題を身近に感じてきた人。
広島・長崎の原爆の放射線影響に関心がある人。
放射線と社会の関係を整理して考えたい人。

福島第一原発事故後、社会的に大きな議論となったのが、内部被ばくは外部被ばくより危険かどうか、というテーマです。事故後数年にわたって、内部被ばくの危険説が、SNS、新聞・雑誌や単行本においても、席捲する状況にありました。

公式見解と内部被ばく危険説

公的な資料(たとえば環境省の「統一的な基礎資料」[1])には「外部被ばくでも内部被ばくでも、Sv(シーベルト)で表す数字が同じであれば、人体への影響は同じです。内部被ばくでは、体内での滞留状況に応じた放射性物質からの被ばくが続くことを考慮して線量が計算されています。」などと書いてあります。しかし、これに真っ向から反対する言説を見聞きする機会が多くありました。

特に、内部被ばくは特別危険である、カリウム40のような自然放射線とは比較できない、ホールボディカウンタ(WBC)では検出できない、原子爆弾被爆者の認定でも過小評価されてきた、などという説を主張する論説を見たことがある方も多いと思います。このひとつひとつに、環境省などの政府系のサイトにも反論は載っていません。そのことも手伝って、これらの説が、政府や電力会社、ICRPや「御用学者」などへの不信感に共鳴する人々の間で、広く支持される状況にありました。

[1]「統一的な基礎資料(平成27年度版)」(環境省、2015年)より「QA3 「外部被ばく」と「内部被ばく」は、どう違うのですか。」https://www.env.go.jp/content/900412624.pdf

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この記事を書いた人

一瀬昌嗣

合同会社一瀬研究所 代表社員
専門:原子核物理学、放射線測定。

高エネルギー重イオン衝突のシミュレーションによる研究を行い、北海道大学にて博士(理学)の学位を取得。
神戸市立工業高等専門学校 准教授、原子力規制庁 国際・放射線対策専門官、ミリオンテクノロジーズ・キャンベラ株式会社 M&Eエンジニアなどを経て、2024年から独立。同社と連携しながら、放射線測定・評価の実務を継続しつつ、新規の分野開拓を志向し、現在に至る。

著書:「放射線必須データ32」創元社 分担執筆
Web: http://isse.jp/