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  • Ra-223に代わって、Ac-225および、At-211の開発が進められていると記載がありますが、なぜRa-223から移り変わっているのでしょうか? 製造や安定供給の難しさが寄与しているのでしょうか?

    骨以外の部位に集積する薬剤の開発が可能なため

    Ra-223は、同族元素であるカルシウムと同様に骨に集積するという性質があり、これを利用して骨転移のある前立腺がんの治療に適用されています。しかし、その化学的性質から、安定的に分子へ結合させることができず、分子標的治療が困難であるため、骨転移に特化した適用となり、他部位の腫瘍への展開が難しいという特徴がありました。

    一方、Ac-225/At-211は抗体、ペプチド、小分子などに標識可能であり、骨以外の部位に集積する薬剤を設計することができます。この分子標的治療としての設計自由度の高さが、Ra-223に代わってAc-225/At-211の研究開発・製造が進められている主な理由です。さらに、Ra-223には製造が原子炉に依存してしまう、壊変待ちで増産が遅い、高純度の分離が難しいといった製造・供給上の課題も挙げられます。

    なお、これらに加えて、医薬品としての供給が経済的に成立するかという点も重要な観点になります。国際的には、放射性医薬品において「フルコストリカバリー」の考え方が重視されており、今後の Ac-225/At-211 の供給についても、製造・供給体制そのものに加えて、経済性の観点から検討が進められていくものと考えられます。

この回答を書いた人

一瀬昌嗣

合同会社一瀬研究所 代表社員
専門:原子核物理学、放射線測定。

高エネルギー重イオン衝突のシミュレーションによる研究を行い、北海道大学にて博士(理学)の学位を取得。
神戸市立工業高等専門学校 准教授、原子力規制庁 国際・放射線対策専門官、ミリオンテクノロジーズ・キャンベラ株式会社 M&Eエンジニアなどを経て、2024年から独立。同社と連携しながら、放射線測定・評価の実務を継続しつつ、新規の分野開拓を志向し、現在に至る。

著書:「放射線必須データ32」創元社 分担執筆
Web: http://isse.jp/