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武田邦彦「2015年放射能クライシス」 (100ミリシーベルトで、子供のがん患者発生率は100倍以上になる)

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3、100ミリシーベルトで、子供のがん患者発生率は100倍以上になる

武田氏はこの記述の前に、「年100 ミリシーベルトの被曝で2倍の人ががんで死ぬ」とこの本の中で主張しています。

国際放射線防護委員会(ICRP)では、大人も子供も含めた集団では、100ミリシーベルト当たり0.5%がん死亡の確率が増加するとして、防護を考えることとしています(LNT仮説)。これは原爆被爆者のデータを基に、低線量率被ばくによるリスクを推定した値です。

これを「年間がん発症率(1年あたりの発症・死亡率)=0.5%」と扱い、背景の年間率(0.45%)に足して「0.95% → ≒2倍」としていますが、ICRPの0.5%は生涯追加リスクであり、年間率として使うのは誤用です。たとえば、「被曝なしのときのその人ががんで死亡するリスクは日本人ならおおよそ0.2〜0.3(20〜30%)とすると、

線量 Dを受けたときの被曝後の生涯がん死亡リスクR(D)は、

R (D) ≈ R0+ kDと書けます。

たとえば、

生涯がん死亡リスク: R0=0.25(25%)

リスク係数:k=0.05Sv-1

生涯で100msv=0.1Svを受けたとすると、

R (D) =0.25+0.05×0.1=0.25+0.005=0.255となり、25.5%ていどになり、2倍にはなりません。

https://www.env.go.jp/chemi/rhm/current/03-04-03.html

 

また、子供のがん患者発生率は100倍以上になるは、同じ実効線量を受けた場合、子どもの方が成人より高リスクであることは確かですが、同じ線量に対し「子どもは成人の数倍(1.5〜2倍程度)」であり、100倍というオーダーを支持するデータはありません。

文献的には、

・固形がん死亡リスクは「被ばく年齢が10歳若くなるごとにおおよそ3割増」程度

https://www.jstage.jst.go.jp/article/generalist/38/4/38_369/_pdf?utm_source=chatgpt.com

WHO・国連等の評価でも、20歳の成人と比較して、

10歳児 ≈ 1.5 倍

1 歳児 ≈ 2倍程度、という数字が示されています。

https://www.env.go.jp/content/900411772.pdf?utm_source=chatgpt.com

 

更に2025年の今、福島事故の実際の線量から考えれば、武田氏は「1年100 mSv」を想定していますが、UNSCEAR 2013/2020報告や日本政府の評価では、住民の実効線量は:多くの住民で事故後1年目の実効線量は数〜十数 mSv程度であり、生涯追加線量でも10 mSvを下回る人が大多数と見積もられており、「福島の住民で、放射線に起因する健康影響の有意な増加が観察されることはない。」と結論されています。

https://www.unscear.org/unscear/uploads/documents/unscear-reports/UNSCEAR_2020_21_Report_Vol.II.pdf?utm_source=chatgpt.com

 

更に、近年多くのレビューで「被ばく線量が100 mSvを下回る領域では、がんリスク上昇を統計的に明確に検出できていない」とされています。例えば「Health effects of low levels of exposure to ionizing radiation」では「放射線リスクは約100 mSv以下では直接の疫学的データによる推定困難」などと記述されています。

https://www.niph.go.jp/journal/data/67-1/201867010013.pdf?utm_source=chatgpt.com

近年「LNT仮説そのものを再検討すべきだ」という議論も出ています。最近の論文では、低線量域(1年100 mSv以下)について「疫学的に有意な影響が統計的に確認できない」としてLNT仮説への懐疑を示しています12

 

参考文献

1)Völkle, Hansruedi, Do We Need the LNT Hypothesis in Radiation Protection? Could a Traffic Light Model Be a Practicable Solution?  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41134312/

2) Bando M, Kinugawa T, Manabe Y, Masugi M, Nakajima H, Suzuki K, Tsunoyama Y, Wada T, Toki H. Study of mutation from DNA to biological evolution. Int J Radiat Biol (2019);95(7). https://doi.org/10.1080/09553002.2019.1606957.

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